良いリードの条件とは?寿命のサインと、良い状態を長く保つための「5つの調整メソッド」

サクソフォンを演奏していると、思い通りに気持ちよく音を出せるときもあれば、それが難しいときもあります。
このときの不調の原因が、演奏者の技術不足や楽器の不具合という可能性もありますが、リードの状態という可能性もよくあります。

この記事では、演奏者としての経験とちょっとした科学的な観点から、リードとの付き合い方について解説いたします。

この記事を読んで理解を深めたあと、快適な音楽生活が待っているかもしれません。

リードが振動する基本的な仕組み

以前の記事でも触れましたが、サクソフォンの音が発生する仕組みは、

マウスピースとリードの隙間を息が流れることでリードが振動する

というのが基本的な現象です。

そしてこの現象をもう少し物理的に説明すると、

という2つが基本的な原理で、この①では物理学の分野の1つである「流体力学」という学問で有名な「ベルヌーイの定理」によって説明できるようです。

具体的な数式については触れませんが、簡単に言えば

流れが速いと圧力が下がる

という法則のことだそうです。

身近なものを使って体験する「ベルヌーイの定理」

レシートくらいの大きさの少し柔らかめの紙を1枚用意して、その短辺(短い辺)の両端を指でつまみ、下唇のすぐ下に当てます。 このとき、お札のようにアゴにペタッと貼り付けるのではなく、紙がアゴに触れないように、床に向かってまっすぐ垂れ下がるように持ってください。紙を持っている部分は顔に対して垂直に、そのあとは紙がだんだん垂れ下がっていく感じです。

そして、紙の「上側」の面に沿うように、まっすぐ前へ息を吹きかけると、紙はフワッと上に持ち上がってくると思います。

紙の上側を流れる空気の速度が上がることで、その部分の圧力(気圧)が下がり、紙が上方向に吸い寄せられたのです。

この実験では、実際には空気の流れが紙の形に沿って曲がることや、周囲の空気を巻き込むことなど、いくつもの流体現象が同時に関係しています。したがって、ここでは「ベルヌーイの定理」をイメージするために単純化した実験だと考えてください。

では、本題であるサクソフォンのリードが振動する仕組みについても考えてみましょう。

息を吹き込むと、口腔内とマウスピース内部には圧力差が生まれます。この圧力差によって空気がリードとマウスピースの狭い隙間を流れるとともに、リードにはマウスピース側へ押し曲げる方向の力が加わります。(感覚的には、リードがマウスピース側へ「吸い寄せられる」と考えてもよいでしょう。)

一方、曲げられたリードには一定の硬さがありバネのような力(いわゆる「コシ」)が発揮されて元の形へ戻ろうとするのです。

これが、リードの振動を考えるうえでの基本になります。

なお、実際の演奏では、リードがどのくらいの速さで振動し、その振動が持続するかには、サクソフォン管内の空気柱の共鳴も大きく関係しています。ここではまず、リードそのものが開閉方向へ動く基本的な仕組みに絞って説明しています。

ちなみに、このときのリードの動きに必要な条件としては、

「リードの硬さ(柔らかさ)が適度であること」です。

人間の呼吸による空気の流れで発生する圧力の変化で曲がる柔らかさと、
元に戻ろうとするバネのような性質(硬さ)が必要です。

※物理の分野では、「曲げ剛性(曲がりにくさ)」や「弾性(元に戻ろうとする反発力)」という表現を使うそうです。

良いリードとは?

サクソフォンやクラリネットのリードは、オーボエなどと違って原料から買ってきて自作して使うということはなく、ほとんどの人は楽器店を通して市販の完成品リードを購入して使います。(中には自作に挑戦したことがある人もいると思いますが、満足できる品質のリードを生成するには非常に高い技術力が必要かと思われます。)

大手のブランドによる市販のリードだったとしても、基本的には自然の植物から作られるため、品質に個体差があります。これを一般的に、「当たりハズレがある」などと表現します。

例えば、Vandoren製のTraditional(いわゆる「青箱」)のアルトサクソフォン用は1箱10枚入りで販売されていますが、そのうち2枚程度しか「当たり」がない...と嘆く声を聞いたことがあります。

この「当たり」とはどういう状態のリードなのかを考えてみます。

演奏者目線で言えば、

  • 息を入れたときに適度な反応で音が出ること
  • 音色や音量、音程を幅広く調整しやすいこと

の2つが主に挙げられると思います。

演奏者は、息の入れ方やリードの押さえ方を様々に工夫することでリードの振動の具合いを調整し、出す音を変化させます。そのとき、演奏者の工夫に素早く正確に反応してくれるリードが良いリードであり、その条件としては次のようなことが考えられます。

  • リード内の構造のムラが少ない
  • リードの裏側(息が通る部分)が平らである(曲がっていない)
  • 適度なコシがある

①リード内部の構造と「個体差」

リードは植物から作られているため、内部は均一な材料ではありません。水を通す道管を含む維管束や、比較的硬い繊維組織、柔らかい組織など、性質の異なるさまざまな構造が含まれています。

こうした組織の密度や配置が比較的均一で、同じ部位の中で硬さのムラが少ないリードほど、局所的に不自然な変形を起こしにくく、リード全体として安定して振動しやすいと考えられます。

しかし、この内部構造を購入後に正確に見極めたり、根本的に均質な状態へ作り変えたりすることは、通常の奏者には非常に困難です。

後述するような湿らせ方や平面性の調整、表面処理、削り方などによって、ある程度「使いやすい状態」へ補正することはできますが、もともとの維管束や繊維組織そのものを作り変えているわけではありません。

こうした天然素材ならではの内部構造の違いも、リードに「個体差」が生じる大きな要因の一つだと考えられます。

②リード裏面の「平面性」

また、リードの裏側が平らであることも重要です。

リードの裏面がマウスピースに正しく密着していれば、息は主にリード先端とマウスピースの間にできる、本来設計された狭い開口部を通って楽器の中へ流れます。

一方、リードの裏側が反ったりデコボコしたりしていると、本来密着するはずの部分にわずかな隙間ができ、そこから余計な空気が漏れる可能性があります。その結果、口腔内とマウスピース内部の圧力差や空気の流れが不安定になり、リードが効率良く振動しにくくなることがあります。

シングルリードは、口腔内とマウスピース内部の圧力差によってマウスピース側へ動き、その開口部を通る空気の流れにはベルヌーイの関係も関わっています。

そのため、リードの裏面をできるだけ平らに保ち、マウスピースと適切に密着させることは、安定した発音やレスポンスを得るための重要な条件の一つだと考えられます。

③リードに必要な「適度なコシ」

ここで言うリードの「コシ」とは、バネが戻ろうとする性質のことです。
また、私の好きなラーメンで例えると、麺の硬さや歯ごたえに近いでしょうか。
あまりに硬いリードでは、振動させるためのエネルギーやリードを上に押し上げるパワーを極端に強く必要とするため、演奏方法の傾向やマウスピースによって不適切な場合もあります。逆に、あまりに柔らかいリードでは、少し息を強く入れただけでリードが振動しすぎて音が鳴りすぎてしまったり、リードが元に戻ろうとする性質が弱いことでマウスピースにリードがくっついたまま離れなくなることで音が出にくくなります。

リードの寿命は?

リードは使っているうちに変化していきます。同じリードでも、ある程度の時間使っていると、「吹きやすい」「良い音が出やすい」と思ったり、「音が出にくい」「変な音が出る」と思ったりします。

そしてさらに長期間使っていると、マイナスの印象しか持てなくなるときがあります。
そうなってきたら、寿命かもしれないと疑ってみましょう。

もちろん、リードの状態を長持ちさせたり回復させたりする工夫はできます。
正確には、長持ちさせるというよりも"劣化を早めない"というイメージです。(具体的な方法は後述します)

しかし、それでも一生使えるというものではありません。

使いにくいリードで無理して演奏しようとすると、演奏技術や精神に変なストレスを与えることになり、上達を妨げてしまいます。

判断基準は?

リードの寿命を判断することはとても困難です。
リードの種類や使い方、管理の仕方、演奏方法など、いくつもの要素が複雑に関係して決まります。
そして何より、"どの状態をリードの寿命とするか"という基準そのものが奏者によって異なります。
リードが割れたり音が出なくなったりするまで使う人もいれば、まだ音は出ても、レスポンスや抵抗感、音色、コントロール性が自分の求める水準を下回った時点で交換する人もいるでしょう。

そこで、ここではシンプルに"リードの変化の果てに使いにくい状態が安定してきたら寿命"と考えることもできますし、

そもそも「寿命」ではなく

と考える方が良いかもしれません。

それなりに長く使ってきたら、新しいリードを試してみて、交換を検討する「点検時期」だと考えるのがいいと思います。

リードはいろいろなタイプのものがあり、アルト用やテナー用などのサイズの違い、前述した素材の個体差に加えて、製法(削り方など)や奏者の吹き方、使用時間、保管方法によっても、その変化の仕方も異なると考えられます。

たとえば、高い音域、大きな音量、強いアタックなど、演奏内容によってリードが受ける機械的な負荷も変化すると考えられます。
また、1枚のリードを長時間連続して使う場合と、何枚かをローテーションしながら休ませて使う場合では、リードが受ける負荷や湿潤・乾燥のサイクルも異なります。

具体的な「リードの点検時期」は?

私のリードとの付き合い方(具体的な製品はプロフィールをご覧ください)

初日
1箱10枚入りの箱を開封し、1枚1~3分程度使用したら交換して、10枚をローテーションする。
2日目
1枚3~5分程度使用したら交換して、10枚をローテーションする。
3日目
1枚5~10分程度使用したら交換して、10枚をローテーションする。
1~3週間
1枚につき15~30分程度使用できるようになって、10枚とも吹き心地や質が揃ってきた(リードの個体差が埋まってきた)と感じられるようになり、状態が安定する。

つまり、徐々に鍛えてスタミナを付けていくイメージです。

開封してしばらくの間はリードの変化が大きく、調子の良いときもあれば悪いときもあるなど、その状態が日々変動して不安定な時期が続きます。もちろん、リード1枚ずつにある個体差の影響にも悩まされます。

そして私のサクソフォンを演奏している時間(練習時間も含む)は、(少なくとも)ほぼ毎日1時間、多いときは5時間を超えることもあります。

このペースでリードを使っていった場合、2~3ヶ月でリードに違和感を覚えて新しい箱を開封しています。

ちなみに、とあるAIにリードの寿命について聞いてみたところ、

とのことでしたが、その情報源や判断の根拠について聞いてみると、単にウェブサイトに書いてある時間の平均をとって答えたようでした。
それなりに信憑性の高いウェブサイトだったようですが、この時間がどういった根拠で算出されたのかが書いていませんでした。
考えられる根拠としては、演奏者◯人に調べて寿命だと感じた時間などのアンケートを取ったとか、使いにくいと感じたリードの状態を顕微鏡などの専門的な装置で分析したなどの実験をすれば、もう少し参考にしやすいデータになると思いますが、現時点では何とも言えない数字だと考えます。

ただ、私のリード使用時間をざっくり計算してみると、AIの出した意見と概ね合致している感じです。

リード点検時期をざっくり計算!

新しいリードを試して交換を検討する「リード点検」をするタイミングを簡易的に計算できるフォームを作りました。

練習量(リードの使用時間)によっても違うので、何となく皆さんの使用時間を入力して目安にしてみてください。


リード点検タイミング計算機

普段の練習時間から、リード1枚あたりの推定使用時間と、 「10〜20時間」に達する時期を計算します。

平日の練習

分
日

土日・休日の練習

分
日

例えば2時間の部活動でも、説明・休憩・他パートの練習などを除いて 実際に吹いている時間が約1時間なら「50%」を選びます。

枚

ケースに入っている枚数ではなく、実際に同じくらいの頻度で使っている枚数を入力してください。 1枚だけを使っている場合は「1」です。

リードの使用時間が短い人はリードの変化はゆっくり進みますので、新しく購入する頻度は減ります。
ただし、「繊維の疲労」よりも「衛生的な限界」や「乾燥による劣化」が先に来る可能性は要注意です。

数日間放置して完全に乾ききった状態から再び湿らせるというサイクルを繰り返すため、リードの繊維への負担が大きく、どうしても寿命が縮まりやすくなります。

また、長期間同じリードを使い続けるとカビや汚れも蓄積しやすくなるため、まだ音が出る状態であっても、半年から大まかに1年を目安に新しいリードを育て始めるのが衛生的にもおすすめです。

もっとリードと仲良くなれる!?5つの実践テクニック

今紹介したリードの寿命(リードの使用可能時間)は、リードの使い方によって大きく変動します。

つまり、使い方が不適切だと短命に終わる可能性が高まります。

そこで、私が実施している「5つのリード調整メソッド」を紹介します。

これまでの記事の中でも重複している内容もあるかもしれませんが、改めて整理してみます。

なお、この方法は科学的な根拠を元に完全に証明できるかどうか怪しい部分も含まれていますので、お試しになる場合は自己責任でお願いいたします。

1. 演奏前は"適度に"湿らせる

良いリードには適度な弾力と柔軟性が欠かせません。そのために、適度に湿らせるのがオススメです。

個人的には、リードの"当たりハズレ"に悩んでいる人の多くは、この作業が不十分であることが多いと感じています。しっかり湿らせればそれなりに使えるようなリードなのに、湿り気が足りていないまま使って良い音を出しにくいと感じているだけ、ということはないでしょうか?
特に古いリードは新品のリードに比べて水分を吸い込みにくくなっていきますので、使いにくくなってきたと感じる古いリードほどしっかりと湿らせるように、ぜひ明日からの練習で試してみてください。

ただし、あまりに湿らせすぎると、リードが元に戻ろうとするコシ(バネの性質)が弱くなってしまうので、振動しにくくなります。
さらに、タンギングをするときに唾液がリードに移動したり、息に含まれる水蒸気がリードに染み込んでいくため、演奏していると時間とともにリードはどんどん湿っていきます。

私は、リードの先端が透けてきたら一旦休ませて他のリードに交換することを考え始めるようにしています。

保管について

リードを使用していない(演奏していない)ときはどう保管すればいいかという問題も気になるところだと思います。

水分を多く含んだままだとカビが生えたり乾燥のしかたに不均衡が生じて妙な変形をさせることがありますので、まずはリードの両面の水分を可能な限り拭き取ってから収納して適度に乾かす必要があります。
ただし、本当にカラカラに乾かしすぎてしまうとリードそのもののしなやかさが失われて損傷しやすくなってしまいます。

また、収納するケースについては、リードを購入したときに付属してくるプロテクターのままでもいいですが、アクリル版やガラス板など平ら面の上に収納するタイプのリードケース、スロットインさせるタイプのリードケースに収納する選択肢もあります。
平らな面の上にリードを置くタイプのリードケースは、リードの形状を保ちやすいメリットに対して通気性に少し心配があるので、しっかり水分を拭き取ってから収納するようにした方がいいでしょう。

精密にリードの状態を管理し長持ちさせたい場合は、リードと一緒に湿度の調節剤を入れるような本格的な管理方法もあります。

2. 複数枚をローテーションしながら、新しいリードは徐々に使う

何枚かのリードを定期的に交換(ローテーション)して使うのがオススメです。

良いリードに出会うと、ついそのリードばかりを長時間使って演奏を楽しみたいと思ってしまいがちですが、長時間リードを使えば水分を含みすぎてしまい、演奏するのに最適なコシが失われるため、演奏しにくくなります。(しかし、そのリードを気に入っているので、演奏しにくくなっていることに気付けないことが多いです)

少し前に書いたように、リードの先端が透けてくるほど水分を含んできたあたりから、どうも演奏しにくいと感じ始めると思うので、そろそろ他のリードに交換することを検討し、これまで使ってきて水分をたくさん含んだリードは徐々に乾燥させて休ませるのが良いでしょう。

3. リードの表側の汚れを指で擦り(こすり)落とす

唾液や唇に含まれる細かい汚れなどが残ると、リードに重さを追加することになり、リードの本来の繊維とは違う不規則な状態のまま演奏に臨むことになります。
もちろん、この状態で使いやすい(理想の音が出やすい)のであれば、そのまま使うのが良いと思いますが、もしリードの反応が鈍く感じたり音色(倍音の含み具合い)に違和感がある場合はぜひ試してみてください。

ただし、擦る(こする)ときの向きや加減を間違えると、リードの繊維を破壊して悪化しかねません。
リードの繊維(線)の向きに、まずは軽いタッチで擦る(こする)ようにして、そのリードを一旦試してみて、まだ納得できなければもう少し強いタッチで擦る、といった具合いに徐々に試していくのがいいと思います。

4. リードの裏側(水分を吸って膨らんだ部分)を削る

リードの裏側は、マウスピースと密着する部分と、マウスピースと離れている部分があります。

マウスピースと密着することは、リードのコシ(バネの性質)を発揮する上で重要なので、汚れやデコボコがあって密着度が低いのは演奏上は不利だろうと考えられます。
指で擦るのも多少の効果はありますが、場合によってはヤスリ(目の粗さによっては紙ヤスリもOK)で削るのも有効です。

さらに、マウスピースと離れているリードの裏側の部分は、水分を多く含み厚みを増していくだけでなく、リードを唇によって押し上げられたり振動したりする中でリードが変形していきます。さらに、振動している部分なのでリードの繊維の状態が徐々に変化してしまいます。

この部分は、息が通ることでベルヌーイの定理によりリードが振動するという仕組みなので、変形が積み重なるとリードが振動しにくくなったり本来とは違った吹き心地になってしまうことがあります。

これを除去するために、私はヤスリで削ったり指で擦る(こする)ことで平らにするという処置をしています。

基本的にはヤスリで削る処置はリードに与える影響が大きいので、まずは指で軽く擦る(こする)ところから始めてみるのがオススメです。

5. リードの先端が波打ったら簡易版アイロンがけを!?

リードの先端(ティップ)が波打ったことがありませんか?

これは、リードを使用した後に徐々に乾燥していく過程で変形してしまうようです。この状態ですと、初期状態のリードの形状と異なるために音色や吹き心地が悪くなることがあります。

そこで、リードに水分を含ませて、その先端をマウスピースの平らな部分などに押し当ててください。(マウスピースでなくても、平らなところであればOK)
さらにその状態のリードを指でしっかり圧迫して、まるで指によるアイロンがけをしてみてください。このとき、リードの繊維に沿って指でこするのがオススメです。
これでも改善しきれない場合は、指でそれなりの圧力で抑えた状態のまま、リードを繊維の方向に合わせて引っこ抜くという処置を繰り返してみてください。

※リードを損傷しないように注意してください。

番外編

私は過去に、使用中のリードを冷凍庫に入れたところ、取り出した直後に「少しコシが戻った」「吹きやすくなった」と感じたことがあります。

この感覚自体には、物理的な説明がある程度できます。ケーンは温度が下がると一時的に硬くなる方向へ性質が変化するため、冷えたリードは普段より曲がりにくくなり、演奏者には「コシが強くなった」と感じられる可能性があります。

ただし、これは「冷凍するとリードが回復する」「寿命が延びる」という意味ではありません。

特に、水分を含んだ使用済みリードを繰り返し凍結・解凍した場合、内部の水分状態や細胞構造へどのような長期的影響が生じるのかについては、完成したサクソフォンリードを対象にした十分な研究がありません。

また、新品の未開封リードを冷凍保存することについても、現在のところ明確なメリットを示す根拠は確認できません。

そのため、日常的なリード管理としては、冷凍庫を使用するよりも、

  • 演奏後に余分な水分を取り除く
  • 極端な乾燥・過湿を避ける
  • 急激な温度・湿度変化を避ける
  • 複数枚をローテーションする
  • 適切なリードケースで湿度を安定させる

といった方法を基本にするのが無難です。

冷凍については「おすすめの保存方法」というよりも、「温度によってリードの演奏感がどのように変わるかを試す実験」として考えるのが現時点では適切でしょう。

まとめ:リードは『時間』ではなく『状態』で判断する

リードは、すべてが同じ状態ではありません。
内部構造にも個体差があり、使用するにつれて水分量や硬さ、形状、表面状態なども少しずつ変化していきます。

だからこそ、「このメーカーなら何時間使える」「20時間使ったから寿命」といった一つの数字だけで判断することはできません。

一方で、特にリードの状態をまだ判断しにくい初心者にとっては、使用時間を一つの目安にして、定期的に新しいリードと吹き比べてみることには意味があります。

大切なのは、時間になったから捨てることではなく、

「今、このリードは自分にとって良い状態なのか?」

を確認することです。

そして、吹きにくいリードに出会ったときも、すぐに「ハズレ」と決めつけるのではなく、

  • 適切に湿っているか
  • 裏面は平らか
  • 表面は汚れていないか
  • 反りや波打ちはないか
  • 適度なコシが残っているか

を一度確認してみてください。

もちろん、どうしても調整では改善できない個体もあります。

それでも、リードの状態を観察し、少しずつ整えながら使うことができれば、「10枚のうち使えるのは2枚だけ」と最初から諦める必要はないかもしれません。

リードは単なる消耗品ではなく、状態を観察しながら付き合っていく素材です。

この記事が、自分に合ったリードを見つけ、少しでも良い状態で長く演奏するためのヒントになれば幸いです。


記事を読んだだけではわからないと思ったら

リードは、同じメーカー・同じ強度でも一枚ずつ状態が異なります。
「このリードは自分に合っている?」「吹きにくい原因はリード?それとも奏法?」といった疑問は、実際の音や吹き方を確認すると分かりやすくなることがあります。

レッスンでは、演奏そのものだけでなく、リードやマウスピースの選び方・扱い方についても一緒に確認できます。

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