どのくらい練習すれば上手くなるの?

"◯ヶ月くらいで□□くらいのレベルになる"

このようなイメージを持って楽器を始める人は少なくないと思います。

憧れの曲を演奏できるようになるまで、憧れの人のレベルに達するまでに、レッスンに通ってどのくらいの期間がかかるのか、という想定をしている人はいると思いますが、未経験者にとって正確な想定は簡単ではありません。

実際に私の生徒さんからも、「初心者があるレベルに達するまでに、どんな練習をどのくらいやる必要があるのか、ネット上にはあまり情報がない」という声を聞いたことがあります。

楽器や音楽の上達は様々な要素が複雑に絡み合って決まるため、最初に1つの指針を示すことはできませんが、一つ共通した結論を先に述べておきましょう。

「練習しないと上手くならない」

逆に、練習だけでは上手くならないという側面もあるのですが、練習なしで上手くなるということは絶対にありません。

当たり前のことではありますが、意外とこの認識が弱いまま楽器を始めている人は少なくないと感じています。

この記事では、そんな複雑な楽器(または音楽)の上達について解説していきます。

楽器を学ぶときの満足感の正体

楽器を習ってみようと考えて、地域の音楽教室にお問い合わせをしたりレッスンに通い始める場合、必ずお金がかかります。
しかし、その投資に見合う満足感が得られなければ、何だかもったいない気分になりますよね。
ここで言う満足度は様々なものがありますが、例えば次のようなものが考えられます。

  • 楽器や音楽が楽しい
  • レッスン(先生や他の生徒たちと過ごす時間)が楽しい
  • 楽器や音楽における上達を実感できる
  • 発表会などの人前で演奏する機会とその喜びを体験できる
  • 音楽以外の能力が充実する

この中で、今回は「上達」について考えてみたいと思います。

上達するために必要なこと

楽器や音楽の上達に必要なこと挙げてみましょう。

  • 目標(上達のイメージ)
  • 練習

自分がどうなりたいか、何となくのイメージでも具体的なイメージでも、理想の自分を持つことで上達までのロードマップを描けるようになりますし、上達しているかどうかを評価できるようになります。

そして、実は勘違いされがちなことですが、レッスンを受けることで上達するのではありません。

練習することで上達するのです。

当然のことではありますが、意外と忘れられてしまう考え方でもあります。

そして、この「目標」と「練習」をサポートしてくれる要素として、次のようなものが考えられます。

  • レッスン
  • 学習者の能力
  • 人前で演奏する機会
  • 憧れの演奏や周りの音楽仲間からの刺激
  • 音楽以外の様々な刺激

他にもあるかもしれませんね!
これらによって、上達の仕方はかなり変動しますので、一概に「このくらい練習すればこのくらいのレベルになれる」とは断言できません。

レッスンの役割

レッスンは、実際に上達を経験し、そのメソッドを理解している指導者からのそのノウハウを学べる機会です。
もっと簡単に言えば、練習方法や考え方を学べるということです。

指導者も、最初から上手だったわけではありません。ただ、実際に上達をしてきた人のノウハウは貴重なものです。
また、熱心な指導者であれば、単に自分の経験則だけではなく、上達のためのノウハウとその指導方法を研究し、論理的に指導できるように常に学んでいますので、生徒の属性(覚えの早さや身体能力など)によって上達の度合いが変わってしまうリスクが低くなります。つまり、どんな生徒でもある程度の上達のサポートができるのです。

学習者の能力

少々残酷な真実でもありますが、学習者の能力も上達を左右する大きな要素です。
思いついたものだけでも少し詳細に解説すると、次のようなものがあります。

●理解の速さ

指導者や教則本の説明をどれだけ速く理解できるかです。また、楽譜を読むときの速さにも繋がるかもしれません。テンポの速い曲ほど、楽譜にかかれている情報を瞬時に理解する必要があります。

●理解の深さ(感受性の高さ)

同じ楽譜を見てもその特徴をより多く理解できたり、同じハーモニーを聴いてもより強い感動を得られる人は上達しやすい学習者と言えます。

●記憶力

音楽や楽器の学習では、記憶力(おそらく短期記憶力)を使います。
レッスンで学んだことを覚えていることはもちろん、譜面を読むときにも記憶力と先ほどの理解の速さが重要です。譜面を読むときは、今演奏している内容を今読んでいては演奏が間に合わないので、今演奏しているところと少し先の譜面を読んで理解して記憶し、次に進んだときには先ほど覚えた譜面を演奏しながらさらに次の譜面を読む、ということを繰り返します。これは車の運転をするときに似ていて、今走行中の場所についての情報だけでなく、進行先の情報(信号や標識、歩行者や対向車の状況など)を読み取って短期に記憶していると思います。

●思考の切り替え速度

思考の切替速度もかなり重要です。
例えば、指導者がお手本を見せてくれるシーンでは、そのお手本に様々な要素(音の特徴や身体の使い方など)が含まれていますが、ふと気になったことのみに集中していると他の特徴を見逃してしまうことがあります。
また、譜面を読むときにも素早い思考の切り替えは必要です。
譜面には、音の高さやリズム(タイミング)、強弱などの表記、演奏順など、多岐にわたる情報が書かれていますが、これらのことをほぼ同時に(または瞬時に切り替えて)認識する必要があるのです。

●身体の構造や運動能力

身体の構造も個人差があり、指導者も学習者も苦労するところかもしれません。
サクソフォンであれば、手の形状やサイズ、唇の厚さや形、舌の形状、歯並びなど、演奏に影響のある要素が演奏者によって様々です。
運動能力としても、呼吸や指の繊細なコントロール、普段の話し方(口や舌の使い方)の癖はサクソフォンの演奏に影響があるはずです。

人前で演奏する機会

発表会など、人前で演奏する機会は、音楽を全く学んだことがない人にとってはとても刺激的な経験です。音楽以外でも、人前でプレゼンをしたり司会をしたりする経験を全員がしてきているわけではなく、とても大きなハードルにはなりますが、自身を上達させるには最高の栄養素と言えます。

憧れの演奏や周りの音楽仲間からの刺激

音楽はもちろん、スポーツ、演劇、美術、文学、書ききれないほど存在するあらゆる分野において、スーパースターがいるはずです。その中には学習者にとって憧れの人がいて、その人から学べることはたくさんあります。
また、レッスンに通ったりインターネットを活用したりすると、同じような境遇の仲間が集うコミュニティーに関わるチャンスがあり、そこで得られる刺激やノウハウは上達のきっかけとしてかけがえのないものとなります。

音楽以外の様々な刺激

「音楽は総合科目」というのが私の持論ですが、実に様々な要素が含まれているのが音楽です。
音の発生や仕組みを理解するためには、物理を中心とした科学的なアプローチが必須です。
音楽理論は数学的な思考も必要になります。
国語(言語)を理解することも、譜面に書かれた記述や歌詞を理解するためには必要かもしれません。
楽器を演奏するには身体の動かし方を考える必要がある体育(運動学)の側面があります。
曲の背景を知るためには「地理」や「歴史」などの要素もあります。
それにまつわるその他の様々な文化の理解も大切です。
そして、私たちの身の回りにある音楽は、音楽そのものを単独で楽しむだけではなく、ドラマや映画のBGMで使われたり、お店で流れていたり、音楽以外のものと結びついていることが多いです。つまり、私たちは音楽を聴くことで何か別のことを想像することがあり、その想像力は音楽以外の経験をすることで育てることができます。

練習期間と上達の目安【初級者編】

これまで音楽の経験はなく、楽譜は読めないが、1週間に1回(30~60分)くらいの頻度で適切な指導をしてくれる人が周りにいて、最低限の楽器を使えている場合なら、

1週間のうち3~4日は楽器の練習をし、1日の練習を60分程度(この中に30分程度の基礎練習を含む)すれば、

早ければ2ヶ月程度、遅くとも半年くらいで人前で「アメージング・グレース」(ただし、簡単な譜面)をそれなりのレベルで演奏できるレベルにまでなると思います。

ここに挙げた条件の中でも、特に基礎練習を適切にできているかどうかが上達においてかなり重要です。
もし上達のペースが遅くて悩んでいる人は、この基礎練習が足りていない可能性をまず疑ってみるのが良いと思います。

サクソフォンであれば、

  • いろんな音(強さ、高さ、音色)を思い通りに出す
  • タンギングを使いこなす
  • 運指(フィンガーチャート)を覚える

という基礎的な技術の精度を上げることが大切です。これらができれば、ほとんどの音楽は自由に演奏できるのですが、これがなかなか奥が深く、いくら上達しても悩み続け、追究していくことになります。

しかし、基礎練習が目的になってしまうのも、上達が遅れる原因になる可能性があります。

まず学習者は、暫定的にでも良いので「目的(やってみたい曲など)」を決めましょう。
独学の場合であれば、いきなり曲を演奏しようとしてみてください。
そして、きっと痛感するはずです。先ほど挙げた3つの基礎的な技術が足りないことを。

つまり、目的を達成するために必要な基礎技術を選定し、そのあたりを中心に強化する練習をします。
しかし、必要な技術の選定や、それらを強化する練習メニューと量は、未経験者にはなかなか判断できるものではありませんので、レッスンに通って指導を受けるのがオススメなのです。

ちなみに、具体的な目標がないけど、何か新しい趣味を持ちたくて始めるという人もたくさんいます。
家族や友人に勧められて吹奏楽部に入って楽器を始める、というケースもあると思います。
この場合は、いろんなコンサートに足を運んだり音楽配信サービスなどを利用したりすることで自分で目標を探してみるのも良いですし、通っているレッスンの先生や身近な音楽仲間に相談することで今後の音楽活動の指針の1つを提案してくれることもあります。

練習期間と上達の目安【中級者編】

その場で渡された楽譜をその場でそれなりに演奏できる人、吹奏楽部で活躍する人など、憧れのあの人のレベルにたどり着くには、どんな練習メニューをどのくらい積み重ねる必要があるのでしょうか。

私の個人的な見解としては、初級者編の練習をさらに強化して1~2年続ける必要があると考えます。

強化の内容としては,

  • 1回の練習量を30分以上増やす
  • 1週間の中での練習回数を1回以上増やす
  • 難易度は高くない短めの曲(エチュードなど)をたくさん経験する

あたりがオススメです。

また、これまでの提案はすべてソロで演奏(独奏)することを想定していますが、サクソフォンはピアノなどと違って一人で同時に出せる音が1つなので、誰かと一緒に演奏するアンサンブルの楽しみも欠かせません。
中級者以上を目指す場合は、こうしたアンサンブルの経験や技術も必要になってくるので、やはりレッスンに通うことでその機会を求めていくという戦略もオススメです。

練習期間と上達の目安【上級者編】

ほぼ毎日のように少なくとも2~3時間を超える練習時間を確保し、それを少なくとも3~4年は続けているだろうというのが私の見立てです。
ただし、どんな人でも3時間練習すればいいわけではなく、これまでの積み重ね(初級者や中級者がこれまで積み上げてきた能力)があるという前提です。

ここまで来ると、30分程度のミニコンサート以上のステージで演奏できる、あるいはソロやアンサンブルでコンクールやオーディションなどの審査の場で充実した体験ができるレベルになっているはずです。

審査の場で上位の結果を出せるかどうかは、コンクールのレベルや周りの挑戦者たちのレベル、審査員との相性などの要素も関わってくるため、毎日3時間以上の練習を4年以上続ければ入賞できるというものではありませんが、経験値としてはとても価値のあるものになります。(レベルが足りないままで審査の場に出ても、得られるものは少ないです)

あなたの上達度合いは想定通りですか?

楽器を習い始めた人には、全く音楽や楽器のことを知らずに最初の一歩を踏み出した人が多いと思いますが、こうした人の中にはレッスンに通えば楽器を上手に演奏できるようになると思っている人が一定数いますが、残念ながら楽器や音楽の習得はそう簡単にはいきません。

一般的に音楽のレッスンは30~60分ですが、
これを週に1回程度やっただけで楽器が上手くなるのは、かなり無理があります。これが現実なのです。

ちなみに私のレッスンでは、「いつまでに何をできるようにしなさい」というような、強制的に生徒に宿題を課すようなことをしていません。
生徒の都合やモチベーションは実に様々だからです。

例えば吹奏楽部に所属している中高生であれば、他に習い事をしている人も多いですし、部活で練習しなければならない曲がたくさんあるのに部活動の時間はどんどん減っています。定期テストや受験シーズンなどの忙しい時期もあれば長期休みで時間がある場合もあります。
どう頑張っても無理な課題を出しても無意味ですし、嫌々ながらに練習をしてもその効果は期待できません。

しかし、この考え方によるレッスンの進め方にも欠点があります。

小学生の頃に漢字ドリルなどで嫌々ながらやった宿題があったからこそ、私たちは漢字を読み書きできるようになったとも言えるので、多少強引にでも課題を与えるようなレッスンの方が成果が出るのかもしれない、と考えることもできるのです。

このあたりも、私のレッスンでは生徒とじっくり話し合って、生徒に合ったプランのレッスンをいたしますので、ぜひお問い合わせください!

私は「音楽と言語はとても似ている」と考えています。
だとしたら、言語を覚えるときと同じような訓練によって音楽を自由に演奏できるようになるはずです。
ぜひ私たちが言語を使いこなせるようになったときの訓練の様子を思い出して、音楽にも当てはめて考えてみてください。

あなたは、理想とする演奏者になれていますか?そのために必要なことは何ですか?

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